起立性調節障害に漢方薬の効果は?症状から見る漢方の効き目を解説

起立性調節障害の症状に漢方は効果があるのでしょうか。
朝がだるくて起きられない、立ちくらみやめまい、頭痛、動悸などがあるといったさまざまな症状が現われる起立性調節障害は子供に起こりやすい病気のひとつです。
自律神経系の異常で循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患なのですが、この起立性調節障害に漢方薬は効果があるのでしょうか?
起立性調節障害について
起立性調節障害は、小学高学年から高校生くらいまでの思春期の方の内、約10%の方がさまざまな症状で悩みを抱えている病気です。
起立性調節障害は、自分の力だけではどうしようもない症状で、自律神経系の異常により循環器系の調節がうまくいかなくなる疾患です。
主な症状には、
- ・たちくらみ
- ・失神
- ・朝起き不良
- ・寝つけない
- ・倦怠感
- ・動悸
- ・頭痛
このようなさまざまな症状があり、うつ病の症状と似ていることから、うつ病と誤診されてしまうこともあるようです。
しかし、起立性調節障害とうつ病は全く別の病気で治療法も異なり、起立性調節障害は小児科、うつ病は精神科と受診する科が異なります。
重度の起立性調節障害では、自律神経による上半身や脳への血流低下で循環調節が障害され日常生活が著しく損なわれるようになります。
この症状が長期に及ぶと、不登校状態やひきこもりを起こし、学校生活やその後の社会復帰に大きな支障となるので注意が必要です。
起立性調節障害への漢方の効果
起立性調節障害の主な症状に、たちくらみ、めまいがあります。
このようなことから漢方医学では、起立性調節障害を”体内の水分が滞り起立という動作により不調をきたしている”と考えています。
体内の水の流れを調整し自律神経の調整作用を持つ漢方には、「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」があります。
西洋医学では、血圧低下に対して昇圧剤を用いることがありますが、昇圧剤は、血圧まで上昇させてしまうため、動悸などの副作用が現れやすいのですが、漢方の苓桂朮甘湯にはそのような心配が少ないため安心して飲むことができるのです。
「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」の効果
苓桂朮甘湯とはどのような漢方薬なのでしょうか。
主に、体力がなく、尿量が減少している人に用いられ、次の症状がある方に効果的です。
- ・めまい
- ・ふらつき
- ・のぼせ
- ・動悸
- ・頭痛
苓桂朮甘湯は、「水」を巡らせる作用があり、めまいの第一の原因は、体内の水分が停滞したり偏在したりする「水滞(すいたい)」であると考えているため、「苓桂朮甘湯」を摂り入れることで、「水滞」を改善させ、生命活動の根源的なエネルギーである「気」の巡りを改善させる効果があるのです。
また、上記の症状は、起立性調節障害でも代表的な症状であるため、治療に効果的とされて用いられています。
苓桂朮甘湯の組成
漢方薬は主に、自然の草や木からとった生薬の組み合わせで作られています。
苓桂朮甘湯の構成生薬は、
- ・茯苓(ブクリョウ)
- ・桂皮(ケイヒ)
- ・蒼朮(ソウジュツ)
- ・甘草(カンゾウ)
この4種類の生薬が配合されています。
茯苓(ブクリョウ)と蒼朮(ソウジュツ)には、水分環境を正常化する働きがあり、めまいなどの症状を改善させ、桂皮(ケイヒ)は、頭痛を発散して治す効果やのぼせに効き、さまざまな症状の緩和に役立つ甘草(カンゾウ)が加わっています。
この4つの生薬が同時に働くことで効果を発揮し、起立性調節障害をはじめとしたさまざまな症状の緩和や治療に用いられています。
病院で処方されるような場合は、苓桂朮甘湯を煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いているのが一般的です。
茯苓(ブクリョウ)
茯苓は、マツホドというきのこの菌核(きんかく)を乾燥させたものです。
サルノコシカケ科のきのこで、マツなどの根に寄生し、カサはなく、丸いかたまりのような形をしているのが特徴です。
胃腸の働きを促進して、食欲不振、消化不良、むくみなどを改善し、精神を安定させる作用などもあります。
桂皮(ケイヒ)
桂皮は、クスノキ科のケイの樹皮を乾燥させたものです。
全体に芳香があり、葉は卵形で、縦方向に3本の葉脈が走っている特徴があります。
健胃、発汗、解熱などの作用があり、食欲不振や消化不良、感冒、頭痛、発熱などの症状に効果があります。
蒼朮(ソウジュツ)
蒼朮は、ホソバオケラの根茎を乾燥させたものです。
高さ30~60cmのキク科の多年草で、主に山地のかわいた場所に生えます。
関節痛、筋肉痛などに用いられ、体内にたまった余分な水分を代謝する働きもあります。
甘草(カンゾウ)
甘草は、マメ科のカンゾウの根を乾燥させたものです。
中国から中央アジアなどの乾燥地帯に生息し、長い根茎を地中深くまで伸ばしているのが特徴です。
せきや胃けいれん・胃の痛みを鎮める他に、激しい緊張やそれに伴う痛みを和らげる効果があります。
苓桂朮甘湯、服用の注意点
苓桂朮甘湯を用いる場合はいくつかの注意点があります。
まず、持病のある方、現在何かの薬を飲んでいるような方は、飲み合わせなどの注意点もあるので服用前に医師に確認するようにして下さい。
漢方薬は、お湯で溶かして飲むのが良いとされていますが、水で粉薬として飲んでも問題はありません。
また、苓桂朮甘湯は食前もしくは食間に飲むのが適しているのですが、かえって食欲がなくなったり、吐き気を催したりするような場合は、食後でも良いとされています。
苓桂朮甘湯の副作用
苓桂朮甘湯には副作用はほとんどありませんが、飲む方の状態によって稀にいくつかの症状が現われることが確認されています。
重い副作用はめったに起こらないとはされていますが、だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえといった症状が確認されています。
また、軽い症状では、胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気、発疹、発赤、かゆみなども確認されています。
起立性調節障害の治療に漢方を取り入れる
起立性調節障害の治療は、西洋医学的な治療が一般的ですが、十分な効果が得られないケースには、漢方を試みてはいかがでしょうか。
西洋医学で起立性調節障害の治療に用いられる薬物療法は、非薬物療法を行ったうえで処方する「ミドドリン塩酸塩」などがありますが、薬物療法に加えて、環境調整、心理療法、疾病教育などの治療が用いられることもあります。
起立性調節障害の治療は、日常生活に支障のない軽症例では、適切な治療によって2〜3ヶ月で改善しますが、改善がみられない、薬が効かないといった場合もあります。漢方での治療も場合によっては有意義かもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、起立性調節障害に漢方薬は効果があるのか紹介してきました。
起立性調節障害の主な症状に、たちくらみ、めまい、頭痛などがあります。
西洋医学的な治療で改善がみられない場合は、副作用が少なく、体内の水の流れを調整し自律神経を整える漢方「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」での治療も効果的かもしれません。
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